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ティール組織の考察vol.1 日本の会社はなぜ全体性を失ったのか

更新日:2018年4月26日


ティール組織-マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現-

最近、各方面で話題になっているティール組織、皆さん読まれたでしょうか?


私も少々時間が掛かりましたが、先日ようやく読み終えることができました。


ティール組織は、原著『Reinventing Organizations』として著者のフレデリック・ラルーの自費出版という形で2014年に出版となり、2018年英治出版より日本語訳され出版となりました。

これまでの人類の組織の成り立ちと特徴を色で表現し、その進化の過程と比較を説明しながら、我々が慣れ親しんだ組織形態の次なるものとして、いま世界に「進化型組織(ティール)」なるものが生まれつつあること。そしてその組織の可能性を示唆しています。


本書では、数々の企業や組織の具体例からティール組織を構成する3つの要素、導入のポイントなども紹介されています。

ファシリテーターの先輩として何かとご縁があり、ティール組織の解説を書かれたNPO法人場とつながりラボhoms´viの嘉村賢州さんが2年前に新潟に来られ、まだティール組織が日本に広まる前にこのお話をお聞きして以来、ティール組織がずっと気になっていました。


嘉村さんが、「ティール組織は今後10年、日本でも注目される概念になると思います」とおっしゃっていましたが、出版となって以降の状況を見ると、言葉の通りになりそうな予感がします。




ティール組織ここまで注目される理由


それは本の副題にもなっていますが、これまでの常識とされていたものを根底から覆す考えとされているからではないかと思います。

この広がりをポジティブに捉えて新たな可能性にパワーを感じている方、一方でこれまで同様に消費してブームが去っていく一時流行りの理論として見ている方、自身の立場を危ぶまれるのではないかと脅威を感じている方もいるようです。


これまでの当たり前とされていた、上司や部下というヒエラルキーはなくなり、現場と本社スタッフという仕組みも不要、売り上げ目標や予算もなし。さらには競合という概念すらも超越するといえば、長らく信じられてきた天動説が実は地動説でしたというくらいのインパクトがあると思います。そうりゃあそうですよね。


実はかつて営業をしていた頃、組織規模で関わった案件で、依頼されていた成果物はつくれたものの、その本質ともいえる関係性の問題に対して適切な介入ができず、組織に不健全な依存と不信が生じてしまい上手くいかなかったという苦い失敗体験をしました。


この体験以降、自身の至らなさを省みてファシリテーションや組織開発など、組織そのものに興味を持ち、学ぶようになった経緯があります。


組織という人間が開発したシステムについて学んできた者の一端として、ティール組織は組織概念を根底から覆す問いを投げかけているよう見えます。


まだ日本でのティール組織導入事例はありませんが、組織開発やファシリテーションを仕事として関わらせてもらっているなかで、日本にどのような影響を与えていくかを見届け、自分なりにも研究をしていこうと考え、記事を定期的に書いていこうと思います。



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VOL.1 ホールネス(全体性)はなぜ失われたのか?


発達段階についての解説は他にお譲りして、vol.1ではティール組織をたらしめている3つの要素の1つ、ホールネス(全体性)について考えてみたいと思います。


ホールネスについて、ティール組織では「自分をさらけ出して職場に来ようという気にさせるような、一貫した慣行」と表現されています。


これまでの組織では、職場では自分のプライベートの面を切り離し、職場で「社会人としての自分」「役職としての自分」という仮面をつけ、弱さや情緒的な部分を隠して振舞っていますし、そうした振舞いを推奨するような雰囲気が当たり前だった思います。むしろ、そこについてはこれまで特に疑いもしなかったですよね。


昨今の仕事と生活の良好なバランス=ワークライフバランスという言葉から、新たに意識されるようになった人も少なくないと思います。

また、ホールネスという考え方については、ポジティブ心理学の研究者ロバート・ビスワス・ディーナー博士とトッド・カシュダン博士の著書『ネガティブな感情が成功を呼ぶ』によると、 人格のあらゆる部分(ポジティブ・ネガティブ、強み・弱み、成功・失敗)に心を開き、受け入れ、あらゆる感情をうまく活用しながら人生の出来事に効果的に対応できる状態と紹介されていました。


ティール組織においては、「自分自身のあらゆる面を、仕事場や家庭など区別せずに表現できるようになるということ、またそうしたことを受け入れられる環境づくり」といえそうです。


今回、一つの問いとして皆さんと考えたいのが「日本の会社は、なぜホールネスを失ってしまったのだろう」ということです。


この問いについて、1つ私なりに考察してみたいと思います。



達成・成功・勝者を生みだす競争の価値観

そもそも、何をもってして達成・成功、勝者か?という新たな問いが浮かびそうなものですが、これが大きいのではないでしょうか。


これまでの日本社会、とりわけ高度経済成長期の企業は「頑張れば報われる」という世界で、人口と経済の右肩成長に合わせて消費型の生活が良しとされてきました。


広い庭付きの家に住む、素敵なパートナーを見つける、ブランド物を身につける、外車に乗るといった、目に見えるモノへの消費が勝ち組としての成功を表し、唯一の競争的価値観がそこにあったわけですね。


分かりやすく、大企業に入って出世する→給料が上がる→さらに消費という構図も成り立ちました。企業も人口が増えるからモノが売れ、売り上げが上がり給料も上げられる。


一億総中流と言われた時代もありましたから、同期たちより少しでも上に上がり、給料上げて消費を通して目に見える成功を収めるために、自分の弱みなんか見せていられません。


出し抜かれないようプライベートの本当の自分は隠し、個性を制服に押し込み、仮面をつけた自分を見せている人が多かったのではないでしょうか。


環境にもそれは表れており、「管理と統制」の下に区切られた無機質で温かみのないオフィス。情緒的・精神的なものを表に出すことは歓迎されず、正しさやヒエラルキーが支配する会議。安心安全な場はどこにもありません。

そんな環境のなかで自分を押し殺すストレスを感じてでも、当時その先には約束された成功がありました。

しかし、今はどうでしょう。


ご存知の通り終身雇用は崩壊。少子高齢化から年齢分布は逆ピラミッド型となり消費は低迷。上の世代が管理職を占めていることで若い方の出世は難しく、モノが売れないため売り上げは上がらず給料も伸び悩む…


また、価値観の多様化も進み、消費が幸せにつながらなくなりました。

自己顕示欲を満たしていた高額なモノへの消費は、SNSでのフォロワーやいいね!に置き換わったと言えます。


そんな環境下では、自分を押し殺し相いれない価値観のなかで働くことは苦役にしかなりません。型にはまることに、窮屈さを覚える方も少なくないと思います。




職場でホールネスを取り戻すために



誰もが自分自身のあらゆる面を職場や家庭など、区別せずに表現できるようになることで多様性は高まり、ストレスを生む競争原理から解き放たれ、仕事や職場へのコミットメントも高まるのではないかと思われます。


では、いかにして高めていけば良いのでしょうか。


本書内でもホールネスを高めるためにいくつかの慣行が紹介されていますが、特に私がオススメしたいものを2つ紹介します。



1.チェックイン


チェックインとはワークショップのはじめに用いられる手法ですが、私は旅先でホテルや旅館にチェックインするかのように、その場に参加するということを意識してもらうためにチェックインをしましょうとお伝えしています。

毎朝、朝礼を行う職場もあるかと思いますが、その代わりに行ってみても良いでしょう。

人数が多ければ毎朝ペアをつくって交互に一人1分ずつ、もしくは4,5人のグループで全員で5分くらいの時間でも良いと思います。


やり方は簡単で「いまのありのままの気持ち、心にあるものを語ってもらう」というものです。


ホールネスがない職場では、家庭であったトラブル、気分の浮き沈み、気がかりななこと、体調の良し悪しなどは表立って言葉にできません。それを抱えたままでは本人も辛いだけでなく、職場の仲間も事情が分からないため上手く助けることが出来ません


もしプライベートの問題が尾を引き、注意散漫となって普段しないミスもたまたましてしまい、同僚や上司がそこを責めてしまうようなことがあれば、負のスパイラルに陥りまたミスを誘発するといった悪循環にもなりかねません。こうした状況を回避するためにも、日常的に伝えあえることこそがホールネスのある環境です。


チェックインはお互いのコンディションをありのまま共有するという意味だけでなく、感情を言葉にし、メタ認知することで平常な状態に近づけることができると言われています。


人は嫌なことや辛いことはずっと覚えていますが、嬉しいことや良かったことはすぐ忘れる生き物です。最近あった嬉しかったこと・感謝したい出来事を思い出し、話してもらうことを習慣づけることで幸福度が高まります


全社でなくても、部署単位もすぐ出来るのでぜひお試しください。



2.ストーリーテリング


突然ですが、あなたは自分の隣の席の人が「なぜそこにいるのか」をご存知ですか?


あ、○○係だからとか、会社が決めた席順だからでしょ?とかそういう話ではありません。


隣の方が「なぜその仕事を選び、どういう思いをもってこれまで続けてきたか」という理由、そして現在に至るまでの物語を知っているかという意味です。


心の底から安心できる人間関係や信頼を生むためには、仕事という仮面をつけたままではできませんし、そうした関係性においてのチームワークというものは間違いなく生産性が低下すると思われます。


安心安全な場をつくり、本当の信頼を育むためには、これまで良しとされていなかった「仮面の下」をさらけ出せないといけません


ストーリーテリングのやり方は色々ありますが、自分のそれまでの人生の旅路を赤裸々に語ることが基本です。特に人生のターニングポイントとなった体験や自分を形作った体験、その人がその人たらしめるお話をしてもらうと良いかと思います。


1人15分程度、その人をストーリーテラーとして囲み、聴き手はとにかく真剣に、温かみを忘れず、茶々を入れずにお話を聴くことに集中にしてください。


話し終わったら、いい悪いという評価ではなく、率直にその人に向けて自分が感じたことをアイ(I)メッセージとしてフィードバックを送りましょう。


言葉だけでなく、付箋紙に記入し手紙のようにメッセージを送るのも効果的です。私もワークショップでこの手法を使いますが、何歳になっても手書きのメッセージをもらうというのは嬉しいものです。公務員や管理職などお堅い男性も最初は戸惑いながらも、メッセージをもらうと笑顔を見せてくれます。


ストーリーテリングはテーマを変えて定期的に行ったり、職場の顔触れが変わったときに行うと良いかもしれません。


飲み会やスポーツ大会といったこともいいですが、そうした場では意図的に「仮面の下」をさらけ出すのは難しいでしょう。ぜひ、ストーリーテリングを試してみてください。



全体性(ホールネス)はティール組織へのブレイクスルー


個人的にこの全体性(ホールネス)は、ティール組織の他の2つの要素、「存在目的」と「自主経営」にもつながり、日本での導入のしやすさからみても最初のブレイクスルーになるのではないかと考えています。


皆さんの職場で行わている、全体性(ホールネス)を取り戻すための手法が他にあれば、ぜひ教えてください。


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山本一輝


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