「対話」が組織にもたらすもの-5つのコミュニケーションを使い分ける-

最終更新: 2018年12月3日



あなたは、自分が普段どのようなコミュニケーションを取っているかを自覚することはありますか。


「どちらかというと聞き役が多いかな」

「ついつい話過ぎてしまう」

「考えがまとまるまで、口を開かないタイプ」

「感情的になると、早口になるかもしれない」

この問いと向き合うことで、自分が普段無意識に行っているこういったクセを意識し、コミュニケーション姿勢を考えられた方もいるのではないでしょうか。


自らを振り返り、タイプのようなものを分析することもあるかと思いますが、コミュニケーションの方法を考え、その効果を意図して方法を選択している人は意外と少ないと思います。


人材育成やキャリア、働き方など様々な場でファシリテートさせていただきましたが、その際に対話も含めたコミュニケーションの方法を説明し、その有効性について私の理解を説明したところ反応をいただきましたので、今回は普段やっているけど意識することが少ないコミュニケーションの方法と対話についてお話したいと思います。





コミュニケーション(communication)とは?


大前提として、コミュニケーションについての認識を共有しておきたいと思います。


コミュニケーション(communication)
通信、交流、意思疎通。
・社会生活を営む人間の間で行われる知覚・感情・思考の伝達。
・(生物学)動物個体間での、身振りや音声、匂い等による情報の伝達

引用:Wikipedia


当たり前ですが、人間以外の動物もコミュニケーションを取るものです。


そのなかで人間が行うコミュニケーションとは、主に相手と言葉を交わすことを通して、感情や思考を伝え合うこと、また知覚することと言えると思います。




コミュニケーションの5つの方法


ここから本題です。


では、このコミュニケーションがなされるために取っている5つの方法を意識して使っていますか。


「え、5つもあったっけ?」と思われた方もいるかと思いますが、ちゃんと言葉として私たちの文化には存在しています。もっと細かい分け方も出来るかもしれませんが、大きく分類すると以下の5つです。


①おしゃべり(chatting)

②会話(conversation)

③会議(meeting)

④議論(discussion)

⑤対話(dialogue)


英語でも訳が異なりますから、それぞれが違うのはお分かりかと思います。


ここで改めて考えていきたいのですが、この5つを果たしてそれぞれの意味や目的を理解し、使い分けているでしょうか


恐らく無意識に使っている方がほとんどであり、所属する組織風土や環境によって頻繁に行われているもの・行われないものもあるかと思います。


これまでまちづくりのワークショップや企業の会議、異なるセクターの方々による協働の場などを見てきましたが、そこで感じたのはそれぞれの方法の目的や特徴を理解することなく、疑いもなく盲目的にその方法を選択していることが多く、特に縦割りでヒエラルキーの強い組織においては対話が軽視されているように感じています。


各方法に対する解釈は微妙に違いますが、私の解釈として5つの目的と特徴を整理したいと思います。



①おしゃべり(chatting)

【特徴】

無作為に特にテーマ(話題)を決めることなく突然はじまり、自然と終わる話し方。相手に受け止めてもらったり理解してもらうことは意識せず、話しているうちに二転三転と話題が変わることも。相手とコミュニケーションを行うこと、つまり手段自体が目的となることが多い。いわゆる雑談。


【目的】

親睦を深める、相互理解、心情の吐露など



②会話(conversation)

【特徴】

予め話すテーマ(話題)を持って意識的にはじめる話し方。伝えたい意図があり、相手にそれを受け止めてもらい、理解してもらうことを意識する。アジェンダを決めることはほとんどなく、明確なゴールを決めてはじめることも少ない。自分の考えを理解してもらうために相手に合わせた伝え方の工夫を凝らすことも。


【目的】

意思疎通を図る、行動喚起、意識変容



③会議(meeting)

【特徴】

予め話すテーマ(話題)を持ち、はじまりと終わりが明確にあり、話し合った成果も意識する話し方。アジェンダを決めて一定のまとまった時間を確保して行われることが多く2、3人などの少数から数十人単位の大人数でも行う。決められた話題以外を話すことを歓迎されないフォーマルな話し方。落としどころを探りながら話をし、ゴールに向けて互いの意見を伝えあう。議長など進行役のような存在が仕切ることもある。


【目的】

情報の伝達と共有、意思決定、合意形成



④議論(discussion)

【特徴】

予め話すテーマ(話題)があり、その話を論理的に表すための道筋を準備して臨む話し方。何らかのゴールを意識し、自分と意見や考えが異なり対立する際は正当性や妥当性を裏付けるように話をする。話し役と聞き役が目まぐるしく入れ替わり、決定がもつれる際は総じて長引くことが多く、終了後は勝者と敗者のような立場が生まれやすい。議論の当事者となる者は、自身の有能さを周囲に認めさせるために熱くなる傾向も。


【目的】

正当性の証明、意見の優劣の決定、能力の披露



⑤対話(dialogue)

【特徴】

話すテーマは決めるが、明確なゴールは設けずにはじめる、互いの認識の違いを顕在化させる話し方。自分と相手との考えを対等に扱い、自分との違う意見も否定せず受け止めることを重んじる。2~6名程度の人数で行われ、互いの考えを恐れずにオープンにするために安心安全な場をつくるための工夫が必要。


【目的】

意見・背景の違いの受容、参加者の多様性や創造性の活性化、関係性の向上



いかがでしょうか。「いやいや、ここはこうじゃないの?」など、指摘したい方もいらっしゃるのは重々承知ですが、恐らく皆さんの解釈とは大きくはズレていないのではないでしょうか。


ファシリテーターとして介在価値を発揮できると思われるのは、②会話、③会議、⑤対話の3つと考えます。


それはテーマ(話題)が決められており、コミュニケーションの参加者の関係性に対する配慮が求められ、話し合いの過程(プロセス)をデザインすることで成果に影響を与えることが可能な話し方だからです。


日常的に対話という言葉を使用しない方はイメージしにくいと思いますが、先述の各方法の違いを踏まえて対話にはどのようなチカラがあるのかを考えてみましょう。




対話(dialogue)が持つチカラ①:多様性と創造性を活性化する



対話(dialogue)は、お互いの違いを顕在化させるコミュニケーションです。つまり、意図して違いを見せること。この違い=ズレさせることが大切です。


日本には、相手とのコミュニケーションで雰囲気を壊さないように言葉を選んで話すようなことを空気を読むといいますが、これは会話に対して使われる言葉です。


つまり、対話は合意形成を目指すことなくズレさせることを目的にしていますから、空気を読むということは求められません


もちろんズレは下手をすると雰囲気を壊す可能性があります。


だからこそ、恐れずにズレを出してもらうために先ほども語った何を語っても裁かれることのない安心安全な場づくりや、相手のどんな意見も否定することなくまずは受け入れるという前提のルールを共有しておかねばなりません。


これまでの日本の組織のシステムは権威的な男性上司と、働き盛りの比較的同質性の高い男性構成員を前提によって築かれてきました。その頃のコミュニケーションは対話をせず、会議だけで上手くいったのかもしれませんが、今はまったく違います。


女性の管理職も徐々にではありますが増えてきましたし、構成員の年代も価値観もバラバラ。国籍も文化も違うこともありますし、LGBTなど性的嗜好や障害を持った方が組織にいるのも当たり前になりました。組織システムは変わっていないのに、実は日本においても以前の組織よりもかなりの多様性を内包しているのです


社会変革ファシリテーターのアダム・カヘンは、自身の新著の発行記念講演で、「同じ人など存在しない。皆、違いがないように振舞っているだけである。これは違い自体がなくなったことにはならない」と語っていました。


そうした状況を考えれば、会議や会話だけでなく、安心して違い見せ合い受容しあう関係性を築く対話がますます重要ではないでしょうか。


互いに違いがないように振舞うことは、自分自身を偽ることにつながります。果たしてそのような状況で個々が持っている能力を充分に発揮することが出来るでしょうか。


また、対話は会議とは違い、落としどころを探ることなく互いの考えや経験をアイメッセージ(私は~)という言葉で発していきますが、深まりによっては参加者の中で相互に内省が起きていき、最後には参加者は想像もつかない成果(ゴール)に辿り着くことがあります


安心して違いを出し合える環境下で、本当の自分という多様性を発揮し内省的に、そして合意形成を目指すことなく話すことが、結果として意図しないアイディアを生み出すのではないかと考えています。


「対話などして何が決まるんだ?」「時間の無駄では?」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。 では、今の組織の現状に満足されていますか


今の組織は勝手に出来上がったのではなく、これまでの人間関係と組織システムによってつくられたものです。つまりこれまでの選択の結果です


今の組織の現状を変えたいならば、当然これまでと違った試みが必要なのではないでしょうか。




対話(dialogue)が持つチカラ②:ダブルループ学習で「暗黙の前提や固定概念」を突破できる可能性



2つ目は、暗黙の前提や固定概念を突破できる可能性が対話にはあります。


対話では相手の意見を否定せず違いを受け入れ合うために、自分が日常的にしてしまう条件反射のような物事の解釈や決まった枠組みでの捉え方をしないよう、自分の解釈を一旦保留する旨をお伝えしています。

私たちは望むとも望まぬとも、これまでの経験によってつくられた認知の枠組みを持っています。


例えば、目の前の相手がコップの水をこぼし、自分にその水がかかってしまった時、「自分のことを嫌いなのかな」と行動の背景を気にして不安を感じる人もいれば、「まったくドジな人だ」と相手の行動をすぐに評価するような捉え方をする人もいると思います。


相手の行動は一緒ですが、捉え方は十人十色。こうした捉え方によって生じる思い込みのような暗黙の前提が、私たちには無数にあります。

こうした枠組みを無くすことはできません。だからこそ、反射的にそうした捉え方で反応をしないよう、相手の発言を聞きながら自分のなかに湧き上がってくる捉え方(不安、評価、分析など)を心の声として聞きつつ、そこに陥ることなくフラットに受け止めることが保留のイメージです。


こうすることで、普段の捉え方では気づくことが出来なかったものに気づくことが可能になってきます。問題解決的に言えばダブルループ学習によるブレイクスルーが起こります。


ダブルループ学習とは、 米国の組織心理学者クリス・アージリスとドナルド・ショーンが『組織学習』において提唱した概念です。対比するものとしてシングルループ学習があります。


シングループ学習は、経験によってつくられた既に持っている考え方や枠組みにしたがって問題解決を図っていくことです。端的に言えばPDCAサイクルはシングループ学習に該当します。


過去の結果を持っている枠組みによって分析し、計画を策定して行動に移し、評価・改善し行動に活かすということですが、ここには盲点があります


それは、結果を捉える枠組みが変わらなければ、そこから導かれる計画は常に既存の枠組みのなかで捉えているものからしか生まれないということです。


それに対してダブルループ学習は、既存の枠組みを捨てて新しい考え方や行動の枠組みを取り込むことです。


対話を通して自らのクセとなっている枠組みを保留することで、厄介な過去の成功・失敗体験によって作られてしまった暗黙の前提や固定観念に気付き、新たな知識や発見が得られることで修正をすることが可能になります


「視野や広がる」という表現がまさに近いですが、拡張された枠組みによってシングループ学習を回せば、これまでの自分では思いつくことのなかった新たなアイディアが生まれてくるかもしれません。




対話の本質を理解する


お気づきの方もいらっしゃると思いますが、ただ単に形ばかり模してもこうした成果を生む対話は実現されません


多様性や創造性を持ったコミュニケーションの素養を「対話力」と呼んでいますが、対話力は一日にしてならず。


これまでの経験上、対話の質を高めるためには対話の総量が伴います

外部のファシリテーターにお願いすることもできますが、自分たちの組織に本当の対話力を築くためには、一人ひとりが変化成長しなければなりません。

ここまでお話してきたような対話が組織にもたらしてくれる贈り物を受け取るためにも、まず5つのコミュニケーションを意識して使い分け、そして取り組みやすいテーマで対話を行ってみてはいかがでしょうか。


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山本一輝

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